【T8200PRO】透過による共振特性と反射による共振特性の測定結果の比較

T8200PROは、図1のような検査用プローブに非接触ICカードを乗せて共振特性の検査をする機器で、透過(S21)による共振特性の検査、または反射(S11)による共振特性の検査が可能です。 ここでは、同一の検査用プローブとICカードを使用して透過特性及び反射特性を測定し、得られた結果について解説します。

図1 検査用プローブ

測定原理

まず、T8200PROの透過特性及び反射特性の測定原理について解説します。図2は、検査用プローブに非接触ICカードを乗せたときの等価回路です。 検査用プローブ(ループアンテナ)はインダクタンスL1として、非接触ICカードはL0,C1,R0からなる並列共振回路として表されます。L1とL0は磁界結合しているので変圧器として動作します。

透過特性: 図2(a)

  • 透過特性は、検査用プローブを信号経路に対して直列に接続して正弦波を印加し、測定対象を通過した透過波電圧の振幅を測定します。
  • ICカードが共振すると、L1部分での電圧降下が増加するので透過波が減少します。
  • 共振周波数における減衰量は、ICカードの損失R0に依存します。R0が大きいほど大きく減衰します。

反射特性: 図2(b)

  • 反射特性は、T8200PROと検査用プローブを1本の同軸ケーブルで接続(検査用プローブのうち使用しないコネクタをショート)して正弦波を印加し、測定対象によって生じる反射波電圧の振幅を測定します。
  • ICカードが共振すると、入射波のエネルギーがICカードで消費されるので反射波が減少します。
  • 共振周波数における減衰量は、測定対象が50Ωに整合するほど大きく減衰します。
図2 測定原理

測定結果

図3は透過による共振特性の測定結果、図4は反射による共振特性の検査結果です。 設定方法は 透過による共振特性検査及び反射による共振特性検査の設定方法 を参照ください。 測定結果を要約すると表1のようになります。

表1 透過特性と反射特性の測定結果の比較
透過特性(S21) 反射特性(S11)
共振周波数 13.234 MHz 13.424 MHz
減衰量 −6.0dB −10.0dB
負荷Q(QL) 18.9 9.6
無負荷Q(Qu) 26.7 25.18

表1より以下のことがわかります。

  • 透過特性から得られた共振周波数に対し、反射特性から得られた共振周波数は200∼300kHz程度高くなります。
  • 反射特性から得られた無負荷Qと透過特性から得られた無負荷Qは同程度となります。
図3 透過による共振特性検査結果
図4 反射による共振特性検査結果

共振周波数

透過による共振周波数と反射による共振周波数が異なる理由は以下のとおりです。図5はそれぞれの測定方法について、理想変圧器を使用して描いた等価回路です。 RS,RLは信号源抵抗(ともに50Ω)、kは結合係数です。

透過特性

図5(a)の透過特性では、ICカード部分(L0,C0)が並列共振すると、回路を流れる電流iが極小値をとります。よって、この測定方法によって得られる共振周波数は、ほぼICカード単体の共振周波数 1/2π√(L0C0) となります。

反射特性

一方、図5(b)の反射特性については、もれインダクタンス(1−k2)L1があるので、ICカード単体の共振周波数 1/2π√(L0C0) においては回路全体が誘導性なのでインピーダンス整合せず、それよりわずかに高い周波数でL0,C0,R0部分がやや容量性となると整合します。つまり、透過特性の場合よりも若干(200∼300kHz程度)高い周波数において共振します。

図5 透過特性及び反射特性の等価回路

Q値

負荷Q(QL)は次式で計算されます。

QL = f0/ BW, f0: 共振周波数, BW: 帯域幅

帯域幅BWは、共振回路内で消費される電力がピーク値の1/2となる(電圧が3dBだけ低下する)ような周波数幅とします。 透過特性(図3)の場合は、減衰量が極小値から3dBだけ上がったレベルを帯域幅とします。反射特性(図4)の場合は、全反射レベル(0dB)に対して3dBだけ下がったレベルを帯域幅とします。

負荷Q(QL)は、測定対象、アンテナ(プローブ)に加え、駆動回路・受信回路を含めた測定系全体のQなので(図5全体のQ)、透過特性から得られた負荷Qと反射特性から得られた負荷Qは、駆動回路・受信回路の影響の度合いが異なるので単純比較できません。

無負荷Q(Qu)は、測定対象、アンテナ(プローブ)部分のQです(図5の点線部分のQ)。透過特性から得られた無負荷Qと反射特性から得られた無負荷Qは同程度の値となります。

結論

結果をまとめると、以下のようになります。

  • 透過特性から得られた共振周波数に対し、反射特性から得られた共振周波数は200∼300kHz程度高くなります(ただし、このずれは磁界結合の度合いにも依存します)。
  • 透過特性から得られた共振周波数は、ICカード単体の並列共振周波数に近い値となります。反射特性から得られた共振周波数は、回路全体がインピーダンス整合して電力が最大限に伝わるときの周波数で、ICカード単体の並列共振周波数よりも高くなります。
  • 反射特性から得られた無負荷Qと透過特性から得られた無負荷Qは同程度の値となります。

※ ただし、測定対象によっては、正確に測定できない場合があります。 どちらの検査方法を選ぶかは、以下を参考にしてください。

透過特性が有利な場合

  • ICモジュール未実装タグ。
  • 測定対象とアンテナ(プローブ)の磁界結合が強い場合。

反射特性が有利な場合

  • 漏れインダクタンスの影響で複数の共振点ができ、透過特性ではうまく測定できない場合。
  • 測定対象とアンテナ(プローブ)が離れていて、透過特性では減衰量が小さく正確に測定できない場合。